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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『kaori』第2回(全8回)
2015-12-14 19:42






画像はイメージです。










小説『kaori』(便宜上、第2回)









「うれしい。ほんとにごめんね。……じゃ、また連絡するから」
「うん。気をつけてね」
「ありがとう」
 彼女が電話を切ったので、私も受話器を置いた。
 ソファに座った。そして立ち上がり、また座った。ポケットを探った。食器棚に目をやり、本棚を見て、ステレオを眺めた。再び立ち上がり、ステレオの上にあった煙草を手にとった。
 100円ライターで火をつけ、深く深く吸いこむ。5秒待って煙を吐き出す。右手の人差し指と中指のあいだに煙草をはさみ、ソファに戻った。
 フィルターに付いた濃い口紅が、この煙草をこの部屋に置いていった人のことを思い出させた。
 もちろん彼を愛している。
 だけど、もし最初から康徳が既婚者だと知っていたら、それでも好きになったかしら?
 キスしたとき口紅が移っても、
「うれしい。君の口紅」
と言って拭おうとしない康徳。
 私と逢っていて遅くなっても、誰に気兼ねする様子もない康徳。
 どうして、彼に家庭があると見抜けただろう。
 ソファの背もたれの上に両腕を乗せて、足を組み、目を閉じた。
 その時だった。誰かがアパートのドアベルを鳴らした。
「どちら様ですか?」
「山之内と申します。ひろ子さんのことでちょっとお尋ねしたいのですが」
 頭痛がした。
「あの……」
「私はひろ子さんの婚約者です。彼女のことはお聞き及びでしょう?」
「…………」
「何か心当たりのことがあったら教えていただきたいのです」
 まぶたを強く閉じた。そしてドアを開けた。目は伏せたままで。
「どうぞお入りになって。立ち話も何ですから」
 目を上げると、30代半ばの中肉中背の男が立っていた。
「あ、すみません。初めてお目にかかります。山之内です」
「近藤香です。さあどうぞ」
「お邪魔します」
 山之内さんが部屋に入ってくると、妙な感じだった。この部屋に入って来る異性といえば、普段は康徳だけだからだ。
 山之内さんを応接セットのソファに掛けさせ、台所で日本茶をいれた。
「粗茶ですけど」
「どうぞお構いなく。近藤さん、さっそくですが、私はひろ子さんのことをお訊きしたいのです」










つづく。










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