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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『彼女はスリーピング・ビューティー』第8回(全9回)
2015-10-10 19:09







画像はイメージです。









小説『彼女はスリーピング・ビューティー』(便宜上、第8回)









 双葉のからだが車道側にたおれかかった。豊田は持ち前の敏捷性を最大限に発揮して、どうにか双葉の体を支えることができたが、まさに危機一髪だった。
 彼は驚きを隠せなかった。
 双葉がどうやら、眠っているようだったから。
 人形たちが10時を告げる音楽が、有楽町マリオンのほうから聞こえてきた。

 朝の光が大きな窓からさしこんでいて、双葉が目を開けるととてもまぶしかった。
 見知らぬシーツに包まれていた。むっくりと起き上がると、服も着たまま。部屋の隅に目をやると、なんと。
「とっ豊田さん!」
 その声で、ソファーに寝ていた豊田も飛び起きた。
「寝てしまった! 双葉ちゃん、大丈夫かい?」
「だいじょうぶです(?)、けど……私たち、どうしてこんなところに?」
 こんなところとはシティーホテルの一室である。
「どうしてって……君は、どこまで覚えている? あのとき僕が、その、あの……」
 言われて双葉は思い出した。ゆうべ意識をうしなう直前までのことを。そして赤くなった。
「まあ。ご迷惑をおかけしました」
 豊田はベッドに身を乗り出した。
「迷惑だなんてとんでもない。びっくりしたよ。がたがた震えてたかと思うと急に気を失って……いや、眠ってたのかい、やっぱり?」
「そうみたいです」
 豊田はこの事実にふたたび驚愕してもいいはずなのだが、急に赤くなって、双葉から目をそらし、髭の濃くなったあごをなでたりした。
「いやあ、僕は君の家がどこにあるのかも知らなかったから、とりあえずここに来ちゃったんだ。もちろん何もしてないからね」
 豊田のネクタイはゆるみ、ぼさぼさの前髪が額に垂れていた。
 双葉は、何だか、ドキドキドキドキしていた。
 うれしくて。そして、すこし寂しくて。
 豊田は、そらしていた目をふと双葉に向けたとき、またびっくりした。
「ど、どうしたの双葉ちゃん
 双葉の目からは、ポロポロポロっと涙が落ちてきていた。
「わたし……」
 言葉につまった双葉の肩に、吸いよせられるように豊田は手を置いた。
「どうしたの?」
 双葉は涙に濡れた目で豊田をじっと見た。










つづく。










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