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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『彼女はスリーピング・ビューティー』第6回(全9回)
2015-10-03 19:33







画像はイメージです。









小説『彼女はスリーピング・ビューティー』(便宜上、第6回)









「わあ、なつかしい、ここ!」
「この店知ってるのかい?」
「ええ! むかし、両親とよく来たんです。中学生ぐらいの時まで」
「へえーっ♪」
 豊田は何を思ったか、目を輝かせた。
 店内は混んではいなかったがほどよく客が入り、心地よいざわめきを醸し出していた。
 2人は店の奥の、アンティックな柱時計のそばの席に案内された。
「えーと、とりあえず食前に何か飲もう。ハウスワインの……ロゼでいいかな?」
「わたし……グラス1杯のみきる自信がありません!」
「そういえば、いつも忘年会なんかでも、飲んでないもんね。でもだいじょうぶ。もう20歳……いや、21だろう?」
「はい、でも、歳はともかく……」
「まあいいじゃないか。とりあえず形だけ」
「そうですね、それでよければ」
 ワインが来た。
「乾杯したいけど、君のお祖母さんが亡くなったばかりで、不謹慎かな?」
 双葉はちょっと寂しそうな顔をした。だが、
「いえ、だいじょうぶだと思います。祖母はもう82歳で、大往生だったんです。幸い亡くなるときポックリいけたみたいだし」
「そう……それは不幸中の幸いだったね。…じゃあ僕の希望どおりに、君を初めて食事に誘い出すことに成功したことに乾杯!」
「まあ……」
 双葉は赤くなりながらも、豊田の差し出したグラスに、自分のグラスを合わせてカチンといわせた。
 豊田は一気にグラスの半分ほども飲んでしまうと、メニューを開いた。
「お食事は何にしましょう、お嬢様?」
 いま双葉の顔が赤いのは、照れのせいばかりではない。早くもワインがまわってきているのだ。そのせいか、彼女はぎこちなさがとれてきた。
「私、ここのシーフードピザが好きでした」
 豊田も、双葉の素直で微妙な変化を楽しんでいた。
「んっ! いいねえ。僕もシーフードピザは好きだよ。作ったこともある」
「豊田さん、おうちでお料理なさるんですか?」
「いや、家ではしないよ。ここで」
 双葉はきょとんとした。普段でもおそい頭の回転が、アルコールのせいでさらにゆっくりになっている。
「…ここって……」
「実は、大学生のころ、ここでバイトしてたんだ」
「えーっ!」
「僕が20歳のころ、双葉ちゃんは15歳でしょ? ひょっとしたら、僕が作ったピザを食べたことがあるかもしれないね」










つづく。











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