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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『彼女はスリーピング・ビューティー』第3回(全9回)
2015-09-23 19:27







画像はイメージです。









小説『彼女はスリーピング・ビューティー』(便宜上、第3回)








「どうもありがとう、おばさん」

 遺体と2人きりの家の中はさみしいので、双葉は風呂に入るとき、風呂場のすぐ外にラジカセをおいて、BGMにスティングを聴こうと思った。
 だが実際にスティングを聴きながら体を洗っていると、妙な気分になってきた。まるで自分が映画の登場人物になったような。
(ま、いいか)
 顔を洗うと、唇の上が痛い。
 何かしらと思って壁にかけてある鏡をとり、お湯をかけて曇りを払ってから、覗きこんでみる。
「あらー、ショック」
 ニキビができて、白くもりあがっていた。
 双葉はすぐに、そのニキビをつぶした。そして、顔をお湯で洗い、次に水で洗った。
「あーひりひりして痛いわ。ここのとこ寝不足だったから。やっぱり蕗山さんの言うとおり、てきぱきした女になって、夜は10時に寝られるようにならなくちゃ」
「その願い、かなえてあげるよ」
「え♪」
 ふりむくと、浴槽の湯気の上に、うっすらと祖母の姿があった。
「お、お、お、おばあちゃん」
 双葉は腰を抜かした。
「驚かなくてもいいんだよ。怖いことはしないから」
「そ、そう……?」
 双葉は立ち直りもはやい。スティングの音楽につつまれながら、じっと祖母の姿をながめていると、不思議な気分ではあったけれど、すこし心が落ちついてきた。
「おまえは本当にいい子だよ。お父さんとお母さんが亡くなったとき、おまえはまだ16歳だったのに、自分のことは自分でするようになって。おまけに、私が病気になってからは、私の面倒まで見てくれて……」
「そんな、おばあちゃんたら、照れちゃうわ」
 双葉はもうすっかり状況になじんで、まるで生きているおばあちゃんとしゃべっているのとかわらない。
 祖母としては、両手を頬にあてて恥ずかしがるなりの双葉がいとおしくてならないといった様子である。
「おまえに何もしてあげられなかったことが心残りで成仏できないとエンマ様に言ったら、おまえの願い事をひとつかなえる力をくださったんだよ。だからおまえがさっき言っていたことをかなえてあげる。幸せにおなり……」
「あっ! おばあちゃん……」
 祖母は、たちのぼる湯気といっしょに窓から出ていってしまった。
 その時ちょうどカセットテープが片面終わってオートオフで止まった。
「ほんとうなのかしら……」










つづく。










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