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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『彼女はスリーピング・ビューティー』第2回(全9回)
2015-09-20 19:38






画像はイメージです。









小説『彼女はスリーピング・ビューティー』(便宜上、第2回)









「てきぱきやれば、残業だってへって、楽になるはずよ」
「そうですね」
 双葉は一応うなずいたが、手抜きがへたなのは過去の経験で充分承知していたので、どうすれば”てきぱき”できるものなのか考え込んだ。
 そのとき、とつぜん豊田一彦が給湯室のドアを開けた。
「双葉ちゃん、電話だよ」
 彼は双葉のあこがれの人である。彼女より5歳年上の営業部員で、仕事ができると評判である。双葉は赤くなってドキドキした。
「お茶は私にまかせて、電話に出てらっしゃい」
という蕗山女史の声に押されるように、双葉はドキドキしながら豊田の背中に続いた。
 電話は私用に決まっていた。彼女は一般事務、つまり他の社員の雑用をこなすために雇われているので、仕事の電話を彼女にかけてくる人はいない。
「もしもしお電話かわりました」
 小さな白い手で(それも両手で)受話器を持ち、照れながらしゃべる双葉を、豊田がまぶしそうに見ていた。
「ええ、ええ、そうですけど……えっ。ほんとですか。では今からうかがいます」
 豊田は彼女の表情の変化もわかった。
 入院中の祖母が、とつぜんポックリと亡くなったとの知らせだった。

 祖母が死んだことなど感情的には信じられなかったが、ともかく双葉は会社を早退し、病院に行って遺体をひきとった。
 両親が亡くなったときに葬儀をたのんだ葬儀屋に電話をして葬儀の手配をした。
 隣のおばさんが、霊柩車を見て事態を察し、手伝いにきてくれた。
 他に親戚もいないので、通夜は小規模で良かった。
 とはいっても、喪主というものは気を抜くわけにはいかない。
 弔いにきてくれた人々に酒や寿司をふるまい、思い出話を聞く。双葉自身はまだ祖母の死を信じられないのだから奇妙なものだ。客はほとんどが町内の老人だった。
 今夜の最後の弔問客が帰った時には、夜もすっかり更けていた。
 隣のおばさんが心配そうに、
「双葉ちゃん、だいじょうぶ? おばさん今夜は泊まってあげようか」
と声をかけた。
「ううん、だいじょうぶです。すっかりお世話になってしまって、すみませんでした」
「なに言ってるの。私もおばあちゃんにはずいぶんお世話になったからねぇ」
「おばさん疲れたでしょ。どうぞお家に帰って休んでください」
「そう? じゃ、帰るけど、何かあったら、すぐにうちにいらっしゃい」










つづく。











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