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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『彼女はスリーピング・ビューティー』第1回(全9回)
2015-09-17 19:29






断捨離していて、またも小説を発見してしまったので、
原稿を処分する前に、
申し訳ありませんがブログに載せます。

こんどのは、24歳の時(26年前・1989年)の作品です。










画像はイメージです。









小説『彼女はスリーピング・ビューティー』(便宜上、第1回)









 
 3時になったので、双葉は、給湯室にお茶を淹れに行った。
 さっきから双葉は、この時間が待ち遠しくてしかたなかった。お茶を淹れること自体、きらいではないが、それより今日は、あくびがしたかったのだ。
 昨日もおとといも、残業をたのまれて断れなかった。たのまれると断れないたちなのだ。
 それに入院している祖母の面倒を見に、まいにち病院に行かなければならなかった。
 病院から持って帰った洗濯を一日伸ばしにするわけにもいかなかった。
 自分のもののアイロン掛けや、家の掃除も怠りたくはなかった。
 この「マメ」さは、5年前に飛行機事故で亡くなった両親の性質を受け継いだものだ。
 双葉は、やかんでお湯を沸かしながら、ポットに残っていたお湯を、営業部のひとびと全員の湯呑みに注いだ。そして、お茶の葉の缶のフタでお茶の葉の量を計り、急須にいれた。
 そこまでしたところで、二度目の大あくびが出た。と、そこへ、営業部のもうひとりの女性社員である蕗山女史が入ってきた。
「まあまあかわいそうに。お祖母さんの看病が大変なんでしょうねぇ」
「ふっ蕗山さん。お恥ずかしいところを見られてしまって」
 双葉は赤くなった。
 蕗山女史は食器棚のうえから箱をおろし、もらい物のクッキーの箱を開けた。手拭き用のペーパータオルを手ごろな大きさに折り、お盆のうえに人数ぶん並べる。彼女が手を動かしながら茶わんを見ると、湯気がたっている。
「双葉ちゃん、お茶を入れるの、はやくなったのね」
 双葉はあわてた。
「あの、これ、まだお茶じゃないんです。お茶わんをあっためようと思って、お湯……」
 蕗山女史はあきれたようだ。銀ぶち眼鏡の縁を持ちあげてかけなおし、茶わんをよく見た。
 たしかに、茶わんに入っているのはただのお湯であり、双葉は今ごろもたもたとやかんのお湯をポットに入れて、ポットから急須に注いでいるのだった。
 そのあいだに、蕗山女史はクッキーを並べおわった。
「双葉ちゃん、あなたの淹れるお茶はとってもおいしいわ」
 双葉は目を輝かせた。
「そうですかぁ。ありがとうございます」
「だけどね、社会に出てもう3年になるんだから、もっと要領というものを身につけなくてはダメよ」
「はぁ」
 双葉はシュンとした。蕗山女史は困ったように眉根にしわを寄せて、続けた。










つづく。











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