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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『アンガージュマンの入口』第32回
2015-06-11 19:32


















小説『アンガージュマンの入口』(便宜上、第32回)









「そうなんですよ! あたしも大騒ぎしちゃったの。あの時、あたしすごく雨に濡れちゃったでしょう? あのあとちょっと病気になって、放射能のせいじゃなかと思って。でもお医者さんはそうじゃないって。実際、あたしも元気になったし」
 加代子さんは椅子の背に左のひじをのせた。
「そう…。ま、そうでしょうね。元気になってよかったわねえ」
「ええ。でね、加代子さんどう思います?」
「ん?」
「あたし、友だちに、原発反対運動をやったほうがいいんじゃないかって言ったんです。そしたら彼、原発自体はやめることないって。もう発電の何割かは原子力なんだから、事故が起こったらアフター・ケアをちゃんとやっていけばそれでいいんだって。『第一お前ひとりで何ができる』って言われちゃった」
 加代子さんの眉毛がぴくっと上下した。
「…ふうん。頭のいい人みたいね。その彼は」
「ええ、とっても」
 ちょっと赤くなったりして。
「加代子さんはどう思われます?」
 あらためて尋ねた。この件に関して、ヒデちゃん以外の人の意見をきくのは初めてだ。
「そうね……おおかた、その男の子と同じ意見よ。チェルノブイリは型が特別だしね。でもあたしの友人の科学者で、原発の安全性に疑問を持ってる人がいるけどね。誰にもわかんないのよ、あ、一般人にはってことだけど」
「そうですよね」
「ただ、原発は、核兵器と違って原子力の平和利用だから、姿勢としてまちがってないでしょ? だからいいと思うの、あたしは。一般人の結論」
 感動。
「なるほどね。そういう見方もあるんですね」
「だけど」
 加代子さんは、意志的な瞳であたしの目を見た。
「その彼の、ニヒリスティックな態度は気に入らないわ。『ひとりきりで何ができる?』なんて思ってたら、アンガージュマンがどんどんうしろ向きになっちゃうもの」
 思わず目が大きく開く。
 またこの言葉を聞いた!










つづく。次回、最終回。










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