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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『アンガージュマンの入口』第31回
2015-06-08 20:02







画像はイメージです。









小説『アンガージュマンの入口』(便宜上、第31回)









 女の人が入ってきた。チケットの半券を受け取って、ジュースの入った纸コップを手渡されたあと、店内を見回してる。初めて来たのかな? 誰かと待ち合わせしてるのかしら? あのスーツは、OLだな。
 …あれっ?
 あの人、見たことあるじゃない。
 そうだ! 野音で会った、すごく若く見える人だわ!!
 本を椅子に置いて、彼女のとこへ急いた。
「お姉さん!! お久しぶりですね」
 彼女もびっくりしてるみたいだ。
「あら、あなた、野音の時の……。すいぶん大人っぽく見えるじゃない、今日は。わからなかったわ」
「へへ。服が違うし、お化粧してますからね。あなたはあいかわらずお若いですね」
「まあ、素直ね」
「あなたがシックスティーズ「だけ」のライブに来てくださるなんてうれしいですわ」
「あの時の8つのバンドの中じゃ、シックスティーズがいちばん良かったからね。それに今日は体が空いたし」
 かっこいい言い方。
「今日、おひとりですか?」
 彼女はふくらんだ書類袋をかかえ直した。
「うーん。ま、一応ね。同じ会社の人に声かけといたから、あとで来るかもしれないけど」
「じゃそのかたとあたしの友だちと4人で見ましょうよ。ちょうど椅子が4つあるんです」
「あなたにはお世話になりっぱなしね」
 彼女をテーブルに連れてって腰かける。
「そういえば、お名前なんておっしゃるんですか?」
「あたし? 佐藤加代子よ。いちばん平凡な字の加代子」
「ふうん。あたしはあゆみっていうんです。銀行のコウって書くの。珍しいでしょ? コウって呼んでください」
「わかったわ」
 加代子さんはショルダーバッグからセーラム・ライトと緑色の100円ライターを取り出して、
「あ」
って言ってしばらく迷ったあと、元通りにバッグに入れてしまった。
「どうしたんですか?」
 彼女はふふっ、と笑った。
「きのうから禁煙してたのよね。もう何度めの挑戦かわからないけど、体に悪いから」
「肺ガン」
「だけじゃないわ。みんな意外と知らないけど、煙草でいちばん引き起こしやすいのは、咽喉のガンなのよ」
「いんこう?」
「「のど」のことよ。咽頭ガンと喉頭ガン」
「へえー、ヨウ素131みたい」
「そうだわね。……そういえば、大騒ぎしたものね、チェルノブイリは」










つづく。










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