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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『アンガージュマンの入口』第29回
2015-06-02 21:02







画像はイメージです。









小説『アンガージュマンの入口』(便宜上、第29回)









 うわあ♡
 これってひとつの”知り合い”関係よね。
 すごいわ!!
 …ノボルさんに、誤解させたままなんてヤだわ。
 彼がかわいそうだし。
 横浜駅にいた時よりはかなり楽になってるなと思いつつ、今日最後の階段をかなりスムーズに上って自分の部屋に入る。
 まだふらふらしてるんだけど。
 机に向かう。引き出しから官製はがきを出して、ころがってたボールペンのキャップをとる。シックスティーズの事務所の住所を書いて裏返して本文を走り書きする。
『前略 ノボルさま
 今、横浜から帰ってきたところです。とっても良いステージでしたね。いっしょにいた友だちはとても楽しんでいました。私は今日青いストライプのワンピース着てたんですけど、あなたのド真ん前の2列めのテーブルで座ってました(バレてたそうですね。友だちがシノブさんから聞いたそうです。彼女はシノブさんのファンなのです)。踊らなくてごめんなさい。ノッてなかったんじゃないんです。私だって踊りたかったんだけど、貧血で立てなかったの。だから聴いて楽しむだけにしました。この次にはベスト・コンディションで行きます。楽しみにしてます。草々』 
「この次には」って書きながら、本当にこの次も行きたい、絶対に行かなきゃくやしいって思ったら、また涙があふれた。
 今日が最後のライブなんてヤだ。
 死にたくないよ…!!


     7
 まだ多少頭が朦朧としてるけど、ともかくきのうのことを説明し終えた。
 明るい陽の射す午前中の診察室で、黙ってあたしの言うことを聞いてた安田医師が口を開いた。
「最近、食事はちゃんと取っていますか?」
「食事ですか? …量は減りましたけど、いちおう……。そうですね、1回の食事の量が、普通の時の半分から3分の2になってますね……」
「きのうはどうですか? ちゃんと朝ごはんを食べてから出かけましたか?」
「はい。少しですけど」
 それも、ブランチだったんだけどね。
「そうですか……まあ、多分、栄養が足りなくて血糖値が下がったんだと思いますね。お注射しときましょう」
 そばにいた若い看護婦さんが、さっそく煮沸消毒した注射針とか薬とかを用意し始める。
「あ、あの」
『何ですか』っていうふうに安田医師がこっちを見る。彼はめったに笑わないことで近所でも有名だ。いつも深刻な顔をしてるのだ。
「5月3日に、放射能の入った雨が降りましたよね。私、その日ずっと外にいて、4時間か5時間、雨を浴びちゃったんですけど、それとは関係ないですか?」
 若い看護婦さんがくすっと笑った。きっとかなり大勢の人が同じ質問をしたんだろうな。でも安田医師は深刻に考え込んでいる(ように見える顔をしている)。










つづく。










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