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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『アンガージュマンの入口』第22回
2015-05-10 18:36







画像はイメージです。









小説『アンガージュマンの入口』(便宜上、第22回)




 ノボルさんがこっち見ながら唄ってくれてる!
 踊りながら、見つめ合ってしまった。
 アガっちゃうなー。
 あの目で見つめられると、どうしたらいいかわからない。よぉし! 盛り上げちゃうからねー!!
 って思った時。
 急に音が遠くなって、頭の後ろが「さっ」と寒くなった。
 何なのかしら!?
 と思いつつも惰性で踊り続ける。
 あたしの耳の感じる音量が現実の大きさに戻った時、やっと頭が回転し出す。
 ヤバいみたい。
 足のつま先が痺れてる。手も。
 なんだか息が苦しい。
 これ以上立ってると、倒れちゃうかもしれない。経験ないからよくわからないけど。
 もうダメだ。
 座らなきゃ。
 この曲が終わったら座ろう。目立つのやだもん。
 ノボルさん……は狭いステージの端で、ギターの人と盛り上がってる。
 …で、全部の楽器が一気に激しい音を奏でて、ドラムで締めて、やっと1曲目が終わった。
 膝の力を抜いたら、おしりがスツールに着地した。その衝撃でまた一瞬気が遠くなったけど、すぐに気合いを入れて、スツールから落ちるのだけはまぬかれた。
 拍手がおさまらないうちに、次の曲が始まった。1曲目ほどあおらないけど、やっぱり「踊るべき」曲だ。
 美紀ちゃんが、
「だいじょうぶ?」
って訊いてくれる。
「うん、だいじょぶよ」
って答えながら、手で、”だいじょぶ”の合図もする。小さい声で何か言っても聞こえない環境だから。
 こういう動作ひとつするのにさえ、手の痺れをいちいち感じちゃって気持ち悪いな。
 美紀ちゃんはまた、忍さんのほうを向いて踊り始めた。
 ゆっくり呼吸して、早くなってる脈をとにかくもとに戻そう。
 あーヤな感じだなー。ちょっとでも動くと、もっと気持ち悪くなりそう。ヤバい。
 手とか足も、さっきよりもっと痺れてきたし。
 じっくり唄を聴くどころじゃない。
 手拍子すら打てないんだから。
 前から2つめのテーブルでよかった。
 ノボルさんとあたしとの距離は2メートルもないけど、間に2人くらい、女の子が立って踊ってるから、彼には気づかれずにすむわ。
 2曲目が終わると、ノボルさんは客席全体を見渡して、
「えー今夜は、シックスティーズのショーへようこそ! 会いたかったぜ!!」
と、言った。

 アンコールのラスト・ナンバー『せめて夜明けがくる前は』が終わった時は、拍手することができた。
 ラストがスロー・バラードだとすごく説得力がある。客席が明るくなると、それ以上の「アンコール!!」コールもなく、みんな満足気な顔で帰り始める。
 でもあたしと美紀ちゃんはまだ座ったままでいる。









つづく。











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