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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『アンガージュマンの入口』第11回
2015-04-02 18:49







画像はブーツです。









小説『アンガージュマンの入口』(便宜上、第11回)




 だからフランス人ってすごい。尊敬してしまうわ。
「バンジャマン・コンスタンは言っております」
 杉山先生は黒板にフランス語を書いた。
「 Aimer, c'est souffrir
  Mais aussi c'est vivre.
 すなわち、『愛するってことは、苦しむってことだ。しかしまた、生きるってことだ』」
 きっちりノートをとる。
「バンジャマン・コンスタンにとっては、恋は楽しくなかったんですね。なぜかと言うと、たとえ自分のほうは相手を愛していなくても、相手が自分を愛していないということには耐えられないといった、とてつもない自尊心の持ち主だったのです。ところであなた」
 さ、指されてしまった。
 最前列だから。あたし。
「”自尊心”はフランス語で何と言うか御存知ですか?」
 えっとー、…”自尊心”?
「……”アムール・プロプル”…です」
 教室の後ろのほうで、「おおー」とか「すごい」とかいう男の子の声が聞こえた。よかった、知ってる単語で。
 杉山先生は満足気に笑った。
「そうです。皆さんだって驚いてちゃいけない。もう2年生なんだし、来年はフランス文学を専攻なさるおつもりでこの講義を受けていらっしゃるんでしょうから、”アムール・プロプル”くらい覚えていただかないと」
 たら~り。
 もし答えられなかったら、グサッと傷ついてたな。
 杉山先生がハッパをかけるおつもりなのは、十分わかってるんだけどね。うん。
「”アムール・プロプル”という言葉を造ったのは、前に出てきたラ・ロシュフーコーですよ。これが最初日本語に訳された時には、”自己愛”などと言っておりましたけれども、時が経つにつれてもっと一般的な”自尊心”という言い方に落ちつきました。それでは皆さん、”政治的参加”という意味の、サルトルが流行らせた言葉は知っていますか?」
 出たなー。
 こんな風に、杉山先生は、博識のあまり講義が本筋からはずれてしまうことが多い。
 先生は、今度は御自分で答えられた。
「そうです。”アンガージュマン”です」










つづく。










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