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ヒトカラマニア

…ですが、今は体のメンテナンスの優先順位が高くなってしまい、あまりヒトカラに行けてません/(^o^)\

小説『アンガージュマンの入口』第10回
2015-03-30 20:19






20150330用・バンジャマン・コンスタン
ウィキペディアからお借りした、バンジャマン・コンスタン画像









小説『アンガージュマンの入口』(便宜上、第10回)




 ちっくしょう!!
 あたし、もっと、頭が良ければな。
 またヒデちゃんにバカだと思われちゃった。
 ……。
 テレビの横に、新聞が積んである。
 「アフター・ケア」だけど、まあいいわ。
 原発事故が起こってから今までの記事を、日付順に全部、読んでみた。
 文系のあたしにはわからない言葉がたくさん出てきた。
 それでもようやく大筋がつかめた時には、午前1時をまわっていた。


     3
「ここに、バンジャマン・コンスタンの肖像画が出てますね。ですが、これはかなり美化されているんですよ」
 教科書の中の、杉山教授が示した場所を、教室中の学生たちが見つめた。
 5月半ばの月曜日。3限だ。3限っていうのは、午後のはじめの講義だよ。
 最近のあたしは、勉強に少し意欲的になっている。
 ヒデちゃんに、「次回こそ」、バカと思われないようにという目標のもとに。
 教科書を見る。
 確かに美形だ。
 鼻すじが通ってて、目はくっきりした二重まぶたで(でも何だか悲しそうな感じ)、濃い茶色の髪の毛が、ちょうどいい広さの額に上品に垂れかかっている。
「当時は、……時代おわかりですね? 18世紀から19世紀にかけてですよ……まだ写真機というものがなかったですからね、いくらでも修正した肖像画が描けたわけです。だけども彼の友人たちの書簡なんかを研究した学者なんかによりますとね、本物のバンジャマン・コンスタンはひどい醜男だったらしい。にんじん色のちぢれ髪で、あごがしゃくれていて、鼻もそんなには高くなかった。ところが彼は文学史上有名なスタール夫人や、その他にも何人もの美女を恋人に持ったのですね。それというのは、彼は、話術で女性を籠絡した人物だったのですよ」
 杉山教授自身も話術に長けてると思う。
 この《フランス文学概論》の講義、人気あるもんね。
 もっとも杉山先生は、今は65歳だけど、若いころには綺麗だったんだろうなと思わせる容姿の持ち主でいらっしゃる。
 今日はとってもお天気が良い。
 開いた窓から入ってくる風が、ほんのすこし、夏の気配を漂わせたりしてる。
 杉山先生は続けた。
「現代の日本の若者である皆さんには想像し難いかもしれませんが、日本のじめっとした恋愛とは違って、フランスの、特に当時の恋愛は頭脳戦です。駆け引きに次ぐ駆け引きです。したがって、皆さん、御自分の場合のロマンチックな恋愛とパラレルにフランス文学を読んでもわかりませんよ!」
 頭脳戦!
 これこそあたしが、ヒデちゃんとやりたいことよ!










つづく。











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